Artchevron_right政田武史「赤の他人列伝」横井七菜「Powder」新作個展同時開催

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政田武史「赤の他人列伝」横井七菜「Powder」新作個展同時開催

By the editors of TECHNÉ, posted at 01:14 PM on October 5, 2012

政田武史 “ぬめり ザ・バランス” 2012, oil on canvas, 130 x 80 cm

2012年10月20日(土)より、ワコウ・ワークス・オブ・アート(六本木)にて、政田武史さんの新作展「赤の他人列伝」、横井七菜さんによる初の個展「Powder」が同時開催されます。

政田武史さんは、布に絵具を染み込ませる技法 "ステイニング" シリーズや、ビニールを貼ったパネルにアクリルで描いた "スムース・ペインティング" を経て、近年はオイル・ペインティングとドローイングを中心に制作しています。民族的な慶事や映画、テレビ映像、オンライン映像や画像等の既成イメージを主な制作の出発点とした政田さんの作品は、躍動感のある大胆な筆致と鮮やかな色使いによる構成が高く評価されています。
3年ぶり3回目の個展となる今回は「赤の他人列伝」と題し、最新のオイル・ペインティングとドローイングが展示されます。奇妙な語感をもつこの展覧会タイトルは、展示作品のうちの1点のタイトルでもあり、また、現代社会と表現の関係についての近年の政田さんの考察を反映したものでもあります。インターネットを中心とした現代のメディアにおいて、個人として何らかの表現を発信すること、そしてその際に必ずついてまわる匿名性の要素と、オリジナリティの信ぴょう性の揺らぎ。たとえ本人が著作権を名乗り出たところで必ずついてまわる疑念というものについて語る上で、政田さんは以下のようにコメントしています。

「現代において『個人として発信が出来ている』と考えるのは妄想で、このことに『自覚的』、もしくは『無自覚的』かによって表現の質が変わってくる」

ときに大胆に、ときに慎重に絵筆の筆致が配置されたその画面はまるで、明確な情報が飽和し溢れ出してくる現代的なメディアの一種のようでありながら、慎重な取捨選択の結果として完成したストイックかつ抽象的な絵画空間としても成立しています。マクルーハンが「メディア論」で提示した、メディア自体の能動性が高い「ホット・メディア」と、受け手側の能動性を高める「クール・メディア」という相反する要素が共存しているかのような矛盾をはらんだその画面こそが、政田作品の大きな特徴といえます。
具象と抽象、能動性と受動性の同居という矛盾を備えた画面、絶妙な言語センスが垣間見える作品タイトルの妙、描く喜びを体現したような色使いと筆使いによるエンターテイメント性、そして情報と表現、個人と匿名性についての考察、これらの要素が一丸となって成立しているそれぞれの作品が、イメージの深奥へと鑑賞者を導きます。

政田さんの新作展に加えて、「G-tokyo 2012」でも話題となった横井七菜さんによる初の個展「Powder」も開催されます。

制作の初期において、ドローイングによる映像を作品化していた横井さんは、後にドローイングそのものを作品化し、さらにペインティングの制作もおこなうことで、徐々に表現手段を拡大してきました。
横井さんは、人魚や少女、少年、蝶や蛾、かぶと虫、鳥、ろうそくや炎などを、日常と非日常の境目に開けたような、毒気を含んだファンタジックな世界に配置し、それぞれを対峙させ、そこで発生した状況に応じて干渉させ合うことで自身と世界の関わりを注意深く探ります。いくつかの新作に描かれた蝶の羽の鱗粉を思わせるタイトルを冠した今回の初個展「Powder」で横井さんが展示作品として選んだのは、近年精力的に取り組んでいるペインティング作品に加えて、彼女の表現の根本をなすといえるドローイング作品の数々です。
ペインティング作品において横井さんは、鉛筆に比べて強い物質感や質感を持つ絵の具という媒体が、自身の構築するフラジャイルで細やかな表現世界に与える影響を探りつつ、形式と内容のバランスを乖離すれすれの地点で保ち、拮抗させることで強い緊張感を生み出しています。そして鉛筆によるドローイング作品においては、繊細で瑞々しい感性が、高い技術に裏打ちされたディテールの豊富さと、登場する人物や生物たちの仕草や場面設定の背後に垣間見える物語の要素によって確かな存在感を与えられ、形式と内容の一致を見せています。
作品に登場する少女や生物たちのときに残酷な、儀式めいた振る舞いと、すべての作品に共通して備わる瑞々しさの感覚。説明的要素の省略と、今まさに何かがおこなわれているという臨場感がもたらす物語への欲求。そして高い技術と寓話的な作風の相互作用によってたちあらわれる私/詩的な世界。一見しただけでは決してとらえきれない、1点ごとの鑑賞に長い時間を必要とさせる要素の数々が、凝視と再解釈の繰り返しを鑑賞者にもたらし、中毒性の高い陶酔状態を生み出します。

両展覧会の会期は10月20日(土)から11月17日(土)、初日の20日にはアーティストレセプションが開催(18:00-20:00)されます。この機会に是非ご高覧下さい。

【作家紹介】

政田武史
1977年大阪生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院研究科絵画専攻油画卒業。主な展覧会に「オルター・ジャパンの冒険」(2011,Sprout Curation)、「Re: Membering - Next of Japan」(2009, LOOP、DOOSAN ART CENTER, ソウル)、「New Works」(2009, Wako Works of Art)、「Hi & Lo」(2008, Kaikai Kiki Gallery)、「New Paintings」(2007, Wako Works of Art)、 「ポートレイト・セッション」(2007, 広島市現代美術館)、「Takeshi Masada & Tomohito Ishii」(2006, Wako Works of Art)、「Robert Platt & Takeshi Masada: Practically Sublime」 (2005, Els Hanappe Underground, アテネ・ギリシャ)など。

横井七菜
1983年愛知県生まれ。2006年多摩美術大学油画専攻卒業。主な展覧会に「インシデンタル・アフェアーズ」(2009,サントリーミュージアム, 大阪)、 「from/to #4」(2007, Wako Works of Art)、「GRASS HOPPER」(2003, アトリエグラスホッパー, 東京)、「ナイーブアート展」(2004,ペッパーズロフトギャラリー, 東京)等。今回が初の個展。

バージョン情報
Version 3.0
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