第1回「“SAMURAI”(サムライ)賞」受賞記念トークに北野武監督が登場

2014年10月25日、東京国際映画祭にて新設された、比類なき感性で常に時代を切り拓き続けている人の実績を称える「“SAMURAI”(サムライ)賞」の受賞記念イベントが六本木ヒルズで開催され、第一回受賞者の北野武監督が登壇しました。

トークの中で北野監督は、若手監督からこれからの日本映画について問われ、「日本映画の最低なところは、映画制作会社が劇場と関係をもっているという事で、日本だけじゃないですかね。俺が一番酷いなと思うことは、日本のアカデミー賞で推薦された作品だけしかアメリカのアカデミー賞の外国映画部門にノミネートされないという事で、だから自分の映画は一回も推薦された事はない。最優秀賞もたいてい松竹か東映。自分がベネチアで賞取った時も、優秀賞で最優秀賞ではない。他に色んな賞取ったけど、アカデミー賞だけ。黒澤監督も取ってない。ここで言うのも本当にイライラするけど、今まで取ったアカデミー賞の最優秀賞、優秀賞、見てください。全部持ち回り。今年は松竹、来年は東宝、次が東映(会場笑い)、そんな馬鹿なことやってる。それで、アカデミー賞の会員が選んだっていう。どこにアカデミー賞の会員がいるんだって。手を挙げてもらいたいよ。そういう汚えことばっかりやってるから、日本の映画は駄目になる。そして、それを声にあげて言わないのは新聞社。映画のCMもらってるから、悪口書けねえし。奥山(和由)って馬鹿が(会場笑い)、カンヌ国際映画祭に呼ばれてもいないのに行って、役者を連れて行って人のパーティーで写真撮って、“カンヌ映画祭凱旋”って書いたんだよ。それを新聞紙も週刊誌も連れて行ってもらって、大絶賛って書いたんだよ。あと、吉本のタレントの映画なんて、15分スタンディングオベーションって言って、(客が)15分居ただけだよ(会場笑い)そういう事を平気で書くから、日本は分からなくなっちゃう。それを本気にして劇場に行く馬鹿もいるし。だから皆さんに期待するのは、いくら客が入らなくても、ちゃんとした映画を撮ってほしい。それで食っていくのはいかに大変で、他に食い扶持を見つけないといけないかもしれない。でも、大手の映画会社に巻き込まれないよう、巻き込まれるなら騙してやんなさい。」と、現状のメディアが発信する誤った情報や、映画関係者の悪習について苦言を呈しつつ、若手監督らにアドバイスを送りました。

その他にも、演出に関する質問に対して「監督はいろんな事を囓っていないといけない。映画って総合芸術だから、演劇があって、音楽があって、文学的な才能も必要で、全部入ってるもんだから、演出する時にある程度囓ってないとまずい」と答えたり、表現の制限や制約についての質問には「世界的に人気なスポーツのサッカーも、あれだけ不自由な中で無限のゴールする方法を考えたりする。オーバーヘッドをしたり。そうすると、自由だというのは、本当に必要なのかと思う。俺なんかは、がんじがらめの規制の中で、どれだけの事が出来るのかっていうのが一番いいね。フリーな、とかよく言うけど、不自由でいいの。1日食うのに200円しか使えないとなると想像力をはたらかせるけど、1日1万円あったらなんでも食えるっていう事になるんで、映画以外のあらゆる状況でも、決められた枠の中でいかに出来るのかという精神が必要かと思う。」と答えるなど、真摯に若手監督からの質問に耳を傾けました。

後半には、映画評論家のトニー・レインズさんとカンヌ国際映画祭の代表補佐であるクリスチャン・ジュンヌさんも登壇し、北野映画の魅力について語りました。ジュンヌさんは「北野さんを知ったのは「戦場のメリークリスマス」で、初めて作品を見たのは「ソナチネ」でした。今も大変評価していて、好きな映画は何かと聞かれれば「ソナチネ」と答えます。物語だけではなく、残る感覚、なんという言葉が適切か分かりませんが、ノスタルジアが見た後に残る。他の北野映画に共通する事ですが、ノスタルジア、寂しさというのが、北野さんの映画の醍醐味だと思っています。」と語り、トニーさんは「北野さんを知ったのは大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」で、その後日本に滞在すると、いつも北野さんがTVに出ていました。そして、本日ここにもいらしている西村さんという方から、「北野武が映画を監督したので見て欲しい」と言われて見たのが、「その男、凶暴につき」でした。それはすごい映画でした。その後は、歴史に残る通りです。」と語りました。その言葉を受けて北野監督は、「トニーさんは日本に来ると私が色々と奢っているので、すごい良く褒めてくれます(会場笑い)。また帰りに奢りますので、どうぞ宜しくお願いします。」と照れも交えながら語りました。

“SAMURAI”(サムライ)賞の受賞式は、31日のクロージングセレモニーで行われます。

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