Filmchevron_right「サヴァイヴィング ライフ-夢は第二の人生-」舞台挨拶レポート

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「サヴァイヴィング ライフ-夢は第二の人生-」舞台挨拶レポート

By the editors of TECHNÉ, posted at 01:00 AM on August 27, 2011
サヴァイヴィング ライフ-夢は第二の人生-

ヤン・シュヴァンクマイエル監督の5年ぶりの長編映画「サヴァイヴィング ライフ-夢は第二の人生-」の舞台挨拶が東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで開催されました。以下は舞台挨拶の全文。

司会者「今作は夢が一番のモチーフになっていると思うんですけど、監督にとって夢とはどういうものですか?」

シュヴァンクマイエル監督(以下監督)「今の文明というのは、夢と現実というのが完全に二分してしまったと思います。そして、夢の方では残念ながらお金を稼げないということで、現実の方を重要視するようになったのが今の文明だと思います。しかしながら、私たちの先祖というのは非常に夢を重要視していまして、例えば色々な詩人たちを思い浮かべれば分かると思いますが、私も今回この映画の中で詩人や作家を3人引用しています。ノヴァーリスが第二の人生という言い方をしていますし、リヒテンベルクが「夢とは人生なり」という言い方をしています。それからアンドレ・ブルトンが「夢共和国(※翻訳家注・日本語として正しくないかもしれません)」といい、夢は共和国のようなものだという事を表現しています。夢を軽視する事で、私たちは自らの人生を貧しくしてしまっているというのが私の考えです。夢というのは私の中では純粋な想像力だと思います。モノを作る芸術家にとって、夢は大切な源泉だと思っています。」

司会者「監督は制作を多方面に行っていると思いますが、その中で映画監督というのはどの様な位置付けをなさっているのでしょうか?」

監督「実は私は自分の事を一回も映画監督といった枠組みで考えた事はなくて、勉強をしていた時も、映画監督ではなく演劇家として卒業しております。芸術は、どんな方向に向いていても芸術だと思っています。実は70年代に7年間、映画の撮影を禁止させられていた期間がありました。それは別に私にとって大きな打撃になった訳ではなくて、その間に「触覚」や「想像」にまつわる仕事を発表してきました。」

司会者「そういう創作活動を非常に長い間やってこられて、未だに創作意欲が衰えていないように思えるのですが、ご高齢まで創作意欲が衰えてないというその理由は何故でしょうか?」

監督「私はある種、妄想や執着に取り憑かれていると思うのですが、それがなくならない限りは、何らかの創作活動を続けていくと思います。もし体が弱って、映画撮影ができなくなった時には絵を描くなどして、その時できることを選ぶと思います。私の中では、この妄想や執着が解き放たれている時こそが創作活動であって、自己セラピーの様なものだと考えています。これは終わりの尽きない自己セラピーなのだと思っています。」

司会者「この映画の中では、母親のイメージというのが非常に大きくフィーチャーされているわけですが、監督にとって母親というのはどういう存在なのでしょうか?」

監督「母親というのは決定をするもの、決定者だと思います。母親の方が決定的なわけです。父親というのは誰であるか分からなかったりするが、母親というのは非常に強い存在だと思います。ところがこの文明においては、父親の方が高い次元にあると思われる。母とか母性というのは次点になってしまっていて、父が神で母は自然であるといった見方が支配されているといった今の文明はある意味堕落してると思っています。チェコにはこういった諺があるのですが「男が本当に成人になるというのは、母親が死んでからだ」という言い方があります。」

司会者「これからお客様が監督の映画を見るのですが、そのお客様に向けてなにかメッセージがあればお願いします。」

監督「これからこの映画を見る方に私から何か発言をするというのは非常に難しくて、その理由というのが、実はこの映画の冒頭で私自身がこの映画を紹介するシーンがあります。つまり、今この場に生の私が居ますが、この後暗くなってスクリーン上にまた私が出てきます。そこで皆さんに解説をしたいと思っているので、ぜひそちらを楽しみにしていただければと思います。ただ一つだけ私からお話させて頂けるのであれば、この映画は想像上の映画であり、想像力を要する映画だと思います。ですから皆さんはこの映画を見る際に色々と解釈をする必要があります。今から申し上げておきたいのは、皆さんがどんな解釈をしたとしても、そのすべての解釈が正しいと。あと、この機会を借りてお礼を言わせて頂きたいのですが、小宮さん(テクネー注、レン・コーポレーション代表)とチームメンバーの方々のおかげで、上映のみならず、この様に訪日する事もできました。大変感謝しております。本日はおりませんが、チェコ文化センターの館長ペトル・ホリーにも感謝をしたいと思います。私の面倒もよく見てくれて、通常は通訳もしてくれるのですが、本日は日本に居ないということで、今日通訳を務めてくれている彼女(本日の通訳)にも感謝しています。」

初日の舞台挨拶には多くの行列が出来ていて、監督の新作をいち早くみたいファンで溢れていました。本作は本日8月27日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにて全国順次ロードショーされます。

『サヴァイヴィング ライフ-夢は第二の人生-』

■配給■
ディーライツ

■公式webサイト■
http://www.survivinglife.jp/

バージョン情報
Version 3.0
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