トーマス・ルフの個展が同時開催

2014年10月4日(土)から11月15日(土)まで、トーマス・ルフによる二つの個展がギャラリー小柳(銀座)とTOLOT/heuristic SHINONOME(東雲)で同時開催されます。

トーマス・ルフは1958年、ドイツ南部のツェル・アム・ハルメルバッハ生まれの作家です。デュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に写真を学んだルフは、写真という媒体がもつ伝統的な概念を再検証しながら、シリーズごとにまったく異なる手法を展開してきました。92年にドクメンタ9、95年にはヴェネツィア・ビエンナーレに参加。現在もデュッセルドルフを拠点に活動しており、ドイツ現代写真の系譜を語る上で欠くことのできない存在とされています。

ギャラリー小柳では、火星をモチーフにしたシリーズ「ma.r.s.」の新作と、ビンテージ写真のネガフィルムを素材とした新シリーズ「negatives」が展示されます。幼い頃より天文学に親しんだルフはこれまで、「sterne 星」(1989年〜)や「cassini」(2008年〜)など、宇宙をテーマとしたシリーズを発表してきました。2010年より開始したシリーズ「ma.r.s.」では、NASAの火星探査機によって撮影された火星表面の白黒の高解像度デジタル画像を使用しています。今回は初めての試みとして、赤外線カメラで撮影されたもともと色をもつ画像から制作した新作が発表されます。
新シリーズ「negatives」において、ルフはかねてから注目していた写真のネガとポジの関係性を、自身がコレクションしていたビンテージ写真のネガフィルムを用いて検証していきます。デジタル処理によりネガポジ反転し、モノクロから淡い青の色調に変換された写真には、光と影の関係の逆転のみならず、思いも寄らぬ構図の転換がもたらされ、図像は彫刻的とも言える不思議な実在感を醸し出しています。今回はインドのマハラジャのイメージを中心に、静物、肖像、バレエなど、様々なジャンルの作品が展示されます。

TOLOT/heuristic SHINONOMEでは、フォトグラムを発展させたシリーズ「photograms」の新作が展示されます。写真の草創期より存在するフォトグラムは、暗室のなかで感光紙の上に配置された物体を感光させることにより、その物体の影を像として直接写し取る技法で、1920年代にマン・レイやモホイ=ナジらによって広められました。1990年代からデジタル技術を駆使して次々に新たなシリーズを生み出していったルフは、フォトグラムの技法を高度にデジタル化することにより、本来モノクロで修正のできないフォトグラムによるイメージを自由自在に操作し、躍動感あふれる構図と色相を伝統的な写真技法に与えた新たなシリーズ「photograms」を完成させました。TOLOTではその巨大な空間を活かして、同シリーズの大判4点を核に展示されます。

これまでも様々なシリーズを発表してきたトーマス・ルフの新シリーズを含めた個展、この機会に是非ご高覧下さい。

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