クリスチャン・マークレー個展「Christian Marclay: Scrolls」

2011年10月25日(火)よりクリスチャン・マークレーによる個展「Christian Marclay: Scrolls」がギャラリー小柳で開催されます。ギャラリー小柳での個展は10年ぶり、二度目の開催となります。

本年のヴェネチアビエンナーレで最高賞である金獅子賞を受賞した作品「The Clock」は、数千もの古今東西の映画から時計が映っている場面や、特定の時刻や時間の経過を表すシーンを集め、24時間の映像に編集した大作です。この作品は実際の時間に同期され、常にその時々の時刻のシーンが映像に現れます。マークレーのユーモアあふれる感覚で映像をコラージュした本作。このコラージュの手法は、マークレーの創作において重要な要素のひとつです。

今回のギャラリー小柳の個展では、マークレーの真骨頂とも言えるコラージュの新作が展示されます。近年、作家が関心を寄せているのが、日本の漫画に見られる擬音語や擬声語などのオノマトペ。海外へと輸出された漫画はコミックとなり、英語に翻訳されたオノマトペはマークレーにとって恰好の素材となりました。文字のかたちや大きさにより音を物質化するオノマトペをマークレーは絶妙にコラージュし、漫画のストーリーから音のもつダイナミズムを抽出して平面に封じ込めました。さらにオノマトペのコラージュ作品は、作家自身が世界中から集めた布地をコラージュして構成した大判の掛け軸に表装されます。布地のパターンはオノマトペにつながり、または共鳴するように配置され、掛け軸全体に快活なリズムを与えています。

展示のもうひとつのハイライトは、オノマトペを流れるような曲線を描きながら延々と続いていくようにコラージュした「Manga Scroll」、その長さは20メートルにもおよびます。漫画の起源とされる絵巻物のフォルムに仕立てられた本作は、最新のパフォーマンスの「スコア」でもあります。マークレーのパフォーマンスは、映像作品や平面作品で構成される「スコア(=総譜)」をパフォーマーが解釈して演奏する形式をとることがしばしばありますが、ヴォーカル・スコアであるManga Scrollは昨年のホイットニー美術館での個展「Festival」でジョアン・ラ・バーバラにより初演。日本初演となる今回は、ヨコハマトリエンナーレの特別企画として国際的に活躍するヴォーカリスト巻上公一により演じられます。

展覧会のオープニングにあわせて作家が来日します。また、展示作品の全図版を収録した展覧会カタログ『Christian Marclay: Scrolls』を会期中に発行の予定。

会期は2011年10月25日から12月22日となっています。

【作家概要】
クリスチャン・マークレーは1955年、カリフォルニア生まれ。少年期から青年期までを過ごしたスイス・ジュネーヴの芸術学校で学んだ後に渡米。ボストンとニューヨークの美術大学に在学中の1979年より、ターンテーブルを楽器として用いたパフォーマンスを開始。以来30年以上にわたり、ビデオ、写真、コラージュ、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスとあらゆる媒体で、アートとサウンドの領域を自由に往還する作品を制作。

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